先日母から年金について話を聞きました。
母は62歳ですが、現在も会社員としてフルタイムで働いています。
60歳から厚生年金受給を開始していますが、その年金をもらえていないようなのです。
どうやら、母がもらっている給与の金額が関係しているそうなのですが、わたしは驚いてしまいました。
ということで、早速調べてみました。
年金の仕組みをおさらい:年金への加入(年金を納める)
まず、年金がどういう仕組であるかをざっとさらいます。
20歳になると加入しなくてはいけないものが「国民年金」です。
これは「基礎年金」と呼ばれるもので、20歳以上60歳未満の人は強制的に加入しています。
会社勤めや公務員の人は、基礎年金の上に更に「厚生年金」保険に加入しています。
給与から差し引かれているので、加入しているという意識はないかもしれません。
年金の仕組みをおさらい:年金給付開始(年金をもらう)
65歳になると基礎年金がもらえます(平成30年7月時点)。
この、もらえる基礎年金のことを「老齢基礎年金」と言います。
また、厚生年金に加入していた人は、60歳になると厚生年金がもらえます。
この、もらえる厚生年金のことを「老齢基礎年金」と言います(この受給開始年齢は段階的に引き上がっています)。
一般的な会社員や公務員の場合は、国民年金(基礎年金)と厚生年金の両方から年金をもらうことができるということです。
例えば自営業の人などは厚生年金に加入することができないので、60歳になっても老齢厚生年金をもらえないということですので、自分で蓄えなくてはいけないと考えられます。
厚生年金加入には年齢制限がない
国民年金(基礎年金)は、20歳から60歳まで強制加入だと言いましたが、厚生年金については、そういう年齢の縛りがありません。
20歳未満でも会社員として働いていて、会社で厚生年金保険に加入しているケースもあります。
また、60歳を超えても会社勤めをしている人は、引き続き厚生年金加入者ですので、厚生年金の保険料を支払っていることになります。
60歳を超えて会社勤めをしている人は注意が必要
定年を迎え退職となるのが一般的ではありましたが、最近では定年年齢そのものが上がったり、一旦退職してから再就職をする人も増えています。
老齢厚生年金受給開始となっても、豊かな老後のために、厚生年金受給+給与をもらうべくまだまだ働いている人も珍しくないでしょう。
でもここで注意!
60歳を超えて会社から給与をもらっている人で、老齢厚生年金ももらおうと思っている人は、その給与額と年金額によっては、もらえる年金が減額又はもらえなくなる場合があるのです!
※60歳で受給開始となるのは「厚生年金」です。「国民年金(基礎年金)」は65歳より以前ではもらえませんので、お間違いなく。
年金額が減っちゃう「在職老齢年金」とは?
頑張って働いてお給料をもらいます。
しかしこのお給料の額が、一定の額を超えてしまうと、年金が減額又は支給が停止してしまいます。
この仕組を「在職老齢年金」と言います。
なんだか腑に落ちないかもしれませんが、現在の日本ではこの仕組が取られています。
在職老齢年金は、「老齢厚生年金の基本月額」と「総報酬月額相当」との合計額が、一定の額を超えると適用されてしまいます。
また、在職老齢年金の適用は、年齢によって条件が変わります。
60歳~64歳(65歳未満)
老齢厚生年金の基本月額+総報酬月額相当=28万円以上
65歳以上
老齢厚生年金の基本月額+総報酬月額相当=46万円以上
この計算で、28万円以上もしくは46万円以上となれば、老齢厚生年金の支給額が減額されてしまうことになります。
老齢厚生年金の基本月額とは?
在職老齢年金など何も考えずに、支給開始年齢になった場合にもらえる基本額のことです。ここから引かれたりしますが、とにかく基本となる支給額を指します。
総報酬月額相当の額とは?
会社勤めをしていると、毎月のお給料の他に賞与(ボーナス)もあるかと思います。それらを全部含めて、「総報酬」として計算します。
「標準報酬月額」と「直近1年間の標準賞与額を12で割った額」が、総報酬の月額相当となります。
いくら減額されるか:計算方法
65歳未満の人で、「老齢厚生年金の基本月額」と「総報酬月額相当額」を足して28万円以上になった場合は、残念ながら?在職老齢年金の適用となります。
基本月額と総報酬月額相当額を足しても28万円にならなければ、当然減額されることはありません。
65歳未満の人の減額の計算式は、4段階に分かれています。
- 総報酬月額相当額が「46万円以下」で、老齢厚生年金基本月額が「28万円以下」
- 総報酬月額相当額が「46万円以下」で、老齢厚生年金基本月額が「28万円以上」
- 総報酬月額相当額が「46万円以上」で、老齢厚生年金基本月額が「28万円以下」
- 総報酬月額相当額が「46万円以上」で、老齢厚生年金基本月額が「28万円以上」
それでは、28万円以上になってしまった場合、いくら減額されるのでしょうか。
モデルケースを挙げてみましょう。
Mさんのケース
月給:21万円(月額)
賞与:60万円(年間)
年金:15万円(月額)
総報酬月額相当額は、21万円+(60万円÷12)=26万円
老齢厚生年金の基本月額15万円+総報酬月額相当額26万円=41万円 ※
残念ながら28万円を超えてしまったので(※)、Mさんは在職老齢年金適用対象となります。
Mさんの場合、総報酬月額相当額が46万円以下で、老齢厚生年金基本月額が28万円以下となりますので、上の4段階では、「1」の計算式を使います。
1.の計算式は
「 老齢厚生年金基本月額 -(総報酬月額相当額+基本月額ー28万円)÷ 2 」
を使います。
Mさんに当てはめると、「 15万円 -(26万円+15万円ー28万円)÷2 」という計算になりますので、8.5万円の老齢厚生年金が支給されることとなります。
通常であれば15万円を支給されるところ、8.5万円の支給になるということは、6.5万円が減額されていることが分かります。
驚きですね!
65歳以上は46万円以上で減額
65歳になっても、在職老齢年金という仕組みは存在します。しかし、その適用基準はぐっと下がります。
例えば、上のMさんが65歳時も同条件で働いていたとしましょう。
老齢厚生年金の基本月額15万円+総報酬月額相当額26万円=41万円です。
実は65歳からは、46万円以上で在職老齢年金が開始となりますので、Mさんは老齢厚生年金を減額されることなくもらえることになるのです。
65歳未満の人は28万円の壁、65歳以上の人は46万円の壁があるということです。
制度を知って賢く働こう!
在職老齢年金制度には賛否があります。
超高齢社会を迎える日本において、働ける期間が長くなること、また、長生きをするとその分生活費も必要になることが考えられます。
取るだけ取って、支給は渋るようなイメージを持ってしまいがちですね。
また、老齢厚生年金支給が開始される年齢も段階的に引き上がっています。
基礎年金と同じく支給開始が65歳になることまで予定されています。
制度があり続ける限りその規定に乗っていかないといけません。
そうであるならば、制度の内容をきちっと知って、制度に踊らされないようにしたいですね。