「働く」ということでその対価として賃金をもらい、そのお金で物を買ったりサービスを受けたりすることで、世の中の経済が回り回っていきます。
いわば経済の基礎とも言える労働ですので、やはり国としては、国民にはどんどん働いてもらいたいワケです。
でも、人間みんながみんな健康ではありませんし、様々な事情もあります。
様々な理由を抱えて仕事を辞めてしまった人に、それを乗り越え、再就職を目指すことを目的とした職業促進給付(職業促進手当)について、調べてみましょう!
失業手当をおおまかにおさらい
働いている人が働けなくなったときに、仕事がない間や仕事を新たに探す間、その人の生活を守るために加入するのが、雇用保険です。
よく知られているのがその中のひとつの「失業手当」です。失業手当は職を失ったとき、次の仕事の間までの生活を守るべく、一日いくらかを計算し、一定の期間給付を受けられる(お金をもらえる)制度です。
一日いくらもらえるか、そのくらいの期間もらえるのかというのは、その人が仕事を辞めるまでの勤続状況や、年齢、もらっていたお給料によって違います。
一日の給付額を「基本手当日額」といいます。また、もらえる期間のことを「所定給付日数」といいます。
雇用保険は失業手当だけではない
「雇用保険」と聞くと、失業手当を思い出す人は多いと思いますが、それ以外にも様々な種類があるのはご存知ですか?そのひとつに、再就職を後押ししてくれる手当を備えているものもあります。それが、職業促進給付です。
職業促進給付とは?
健康面や条件面など、仕事を辞める理由は様々ですが、次の仕事を探さなくてはいけません。職業促進給付とは、失業者を対象として、早期に再就職をしてもらうために支援をする目的で給付される手当のことです。
職業促進給付の種類は?
失業者の再就職を支援する職業促進給付には4つの種類があります。
- 再就職手当
- 就職促進定着手当
- 就業手当
- 常用就職支度手当
職業促進給付 <その1.「再就職手当」>
失業した人が再就職を果たした場合にもらえる手当を再就職手当といいます。失業手当をもらえる人が対象というのは大前提ですが、再就職手当の最大のポイントは、なんといっても「早期」に「安定した」再就職をすること!
「失業手当をもらえるんだったら、働かずにもらえるだけもらうよ~」と考える人もいるでしょう。ですが、仕事というのは離れれば離れるほどなかなか次を見つけられなくなります。長い間働かないと、働く意欲も無くなってしまいますしね。
そんな状態を防ぐために、失業手当の給付日数を残しながら再就職した人を応援する制度が再就職手当なのです。
★「早期」のポイント
再就職先の就職予定日の前日までで、「残っている給付日数」が「所定給付日数」の3分の1以上あれば、再就職手当の給付対象です。
★失業手当の給付開始日に注意!
会社都合での失業の場合は、離職手続きをハローワークで行うと、待機期間7日間を経て、失業手当の給付開始となりますが、自己都合での失業の場合は、待機期間7日間+給付開始まで3ヶ月(給付制限といいます)を待たないと、失業手当の給付は開始しません。
失業手当の給付が開始していないことには、再就職手当の対象にはなりませんので、自己都合での退職時には注意が必要です。

↑ 会社都合で退職した場合

↑ 自己都合で退職した場合
※画像参考(ハローワーク資料:再就職手当のご案内)
★いくらぐらいもらえるの?
基本手当日額 × 残っている給付日数 × 60%または70%
この計算式を使います。
※「60%または70%」は、所定給付日数に対してどれだけの日数を残したかで、割合が決まります。
★再就職手当8つの条件
- 失業手当の手続きを開始して、7日間の待機期間が過ぎていること
- 就職前日までに、支給残日数が3分の1以上あること
- 再就職先が前職の会社と関係がないこと
- 給付制限がある人は、その給付期限最初の1ヶ月での決定就職先はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介であること
- 再就職先で1年以上の雇用が見込めること
- 再就職先での雇用保険の条件を満たしていること
- 過去3年間で再就職手当または常用就職支度手当をもらったことがないこと
- 失業保険の手続前から採用が決まっていた雇用先での就職でないこと
★再就職手当の手続き方法
再就職手当の手続きは、ハローワークで行います。
再就職が決まったら、まずはハローワークに連絡をしましょう。連絡をするとハローワークへ就職日の前日に来るように言われます。
ハローワークで失業手当の手続き(この日が失業手当給付の最後の日となります)をし、その際に再就職手当に該当する人には「再就職手当支給申請書」が渡されます。
申請書には、再就職先で記入してもらう部分がありますので、仕事が始まったら早めに申請書を職場に提出しましょう。
職場で記入してもらった申請書が返ってきたら、ハローワークで申請書を提出して、再就職手当の手続きが開始となります。手続き開始の期限は、原則入社後1ヶ月以内ですので、忘れずに余裕を持って行いましょうね。
ハローワークでの手続きが終われば、1ヶ月半から2ヶ月ぐらいで指定口座に再就職手当給付金が振り込まれます。
職業促進給付 <その2.「就職促進定着手当」>
再就職手当をもらった人で、再就職先に6ヶ月以上勤務をすることが大前提です。
ポイントは「定着」ですので、まずは再就職から6ヶ月間いること、そしてこれからもその職場でがんばってもらうことが目的とした制度が就職促進定着手当です。
再就職したものの、以前もらっていた給料よりも少なくて、やっぱり辞めようかな~と思い始めている人が対象だと考えてもいいかもしれません。
★就職促進定着手当をもらえるポイント
再就職手当をもらっていた人がまずは対象です。さらに再就職先で6ヶ月以上雇用されているけれど、再就職先のお給料が以前の職場より低い場合に、就職促進定着手当がもらえます。
★いくらぐらいもらえるの?

※1 「離職前の賃金日額」は、雇用保険受給資格者票で確認できます
※2 月給制の場合は、単純に入社日から何日経っているかで計算します(土日祝も含む)
※画像参考(ハローワーク資料:再就職手当を受給した皆さんへ)
★就職促進定着手当3つの条件
- 再就職手当の給付を受けたこと
- 再就職手当を受けた再就職の日から、同じところで引き続き6ヶ月以上働いていること
- 再就職後6ヶ月間の1日分の賃金が、前職の賃金日額より低いこと
★就職促進定着手当の手続き方法
再就職先で6ヶ月経った日の翌日から2ヶ月以内が、就職促進定着手当の申請期間です。ずっと働けそうだな、とか、もうすぐ再就職から6ヶ月だなという人は前もって準備をしておくといいでしょう。
手続きは再就職手当をもらったハローワークで行います。
引越しした場合も、引越し先管轄のハローワークではなく、再就職手当の手続きをした以前のハローワークで行いますので、ご注意を。申請は郵送でも受け付けてもらえますので、窓口申請か郵送申請かを選びましょう。
申請から3週間ぐらいで指定口座に就職促進定着手当給付金が振り込まれます。
職業促進給付 <その3.「就業手当」>
再就職手当がいわば月給制の会社員や契約社員用の制度だとすると、就業手当は時給制のアルバイト・パートなどの非正規雇用のための制度だと考えてもいいでしょう。
再就職手当も就業手当も、早期に再就職先を後押しする制度としてとても似た性質があります。
しかし、わざわざ正規雇用と非正規雇用を分けているのは、微妙に中身が違うからです。
再就職手当は、残った給付日数分の基本手当60%か70%がもらえます。
残した日数は全体の3分の1以上と決まっていましたね。
就業手当の場合は、残った日数は全体の3分の1以上かつ45日以上を残した状態で、アルバイト・パート仕事をしたというのが条件です。
★就業手当の計算方法
基本手当額 × アルバイトなどで働いた日数 × 30%
★アルバイト代と手当金がもらえてお得?
アルバイト代をもらいながら、失業保険をもらうのは絶対的にアウトです。
しかし、就業手当の申請を行うことによって、給料と手当金がもらえるようになるのでラッキーと思えるかもしれません。
しかし、ここで注意してほしいのは、就業手当の金額は上限が決まっているということ。
そして、就業手当を受け取ったら、基本手当を全部受給したことにされるのです。
★就業手当の上限額は?
就業手当の上限額は1765円です。なので、失業保険の基本手当日額が5900円以上の人は、上限に引っかかってしまいます。
それなら、働かずに失業保険をもらっていた方がいいかなぁと考える人も多いでしょう。
★バイトならバレない?
それなら、バイトをしても就業手当の手続きさえしなかったらいいんじゃないか?と思われる人もいるかもしれませんね。
就業手当の申請をしたことにより、多くの場合が損をしてしまうケースになると考えられます。
しかし、ハローワークの立場では「原則、対象者は全員が申請をすること」というスタンスを取っています。
ただしこれは原則論です。
ハローワークによっては見解が分かれているところもあるそうです。就業手当の手続きを行う予定の人は、よくよく考えられた方がいいかもしれませんね。
職業促進給付 <その3.「常用就職支度手当」>
失業保険の対象者の中で、ある程度年齢が高い人や障害などの就職困難な人が、「雇用期間の長い」「安定した」職業に就職する、もしくは自分で事業を始めるときに給付される制度のことを常用就職支度手当といいます。
★再就職手当の考え方と一緒
基本的には再就職手当と同じ考え方です。再就職手当の場合、「早期」がポイントでしたが、就職困難者が早く仕事を見つけることは難しいのは当然です。
就職困難者が早期に仕事を見つけた場合は、再就職手当をもらえますし、再就職先を見つけるのに時間がかかった場合は、再就職手当の代わりに常用就職支度手当がもらえるというわけです。
★常用就職支度手当7つの条件
- 就職困難者であること
- 基本手当の支給残日数が3分の1未満であること
- 1年を超えて勤務することが確実であること
- 失業保険の手続きをして、7日間の待機期間が過ぎてからの再就職であること
→自己都合退職の場合は、給付制限期間が過ぎてからの再就職であること - 再就職先が、前職と同じ会社又は前職と密接な関係がないこと
- 過去3年間に、「再就職手当」又は「常用就職支度手当」をもらってないこと
- 常用就職支度手当の支給開始日までに再就職先を辞めていないこと
★「就職困難者」の定義
常用就職支度手当に該当する就職困難者とされるのは
- 45歳以上の人
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
- 保護観察中の人
- 社会的事情により就職が著しく阻害されている人
- 一定期間以上継続して雇用されたことがない40歳未満の人(H29年から)
です。
★支給額の計算方法は?
基本手当の支給日数が何日残っているかで、計算式が違います。
- 支給残日数が90日以上の人・・・基本手当日額 × 90 × 40%
- 支給残日数が45~89日の人・・・基本手当日額 × 支給残日数 × 40%
- 支給残日数が45日未満の人・・・基本手当日額 × 45 × 40%
★常用就職支度手当の手続きは?
手続きはハローワークで行います。
再就職先が決まってから1ヶ月以内が期限ですので、就職が決まったら、速やかにハローワークへ報告をし、手続書類を準備するようにしましょう。
書類の中には、再就職先に記入してもらう箇所があるものもありますので、余裕を持って手続きしたいですね。
まとめ:仕事辞めたらすぐにハローワークへ!
がんばって働いていたけれど、いろんな理由で辞めざる終えないこともあるでしょう。
そして、次の仕事がなかなか見つからないこともあるでしょう。だけど、その間も生活は続いていきます。
少しでも不安を取り除くために、雇用保険は存在しています。
そんな時は遠慮なく雇用保険、職業促進給付を活用すればいいと思います。
せっかくの制度ですので、時期を逸することのないように、仕事を辞めた時、そして、めでたく次の仕事が決まったら、すぐにハローワークへ行くようにしましょうね。
働けることは幸せなことです。再就職を後押ししてくれる職業促進給付をどんどん利用していきましょうね!